新川柳作記念館 Ryusaku Shinkawa Memorial

ACE

休日の楽しみ

当時、私の楽しみは日曜日に映画を観に行くことでした。

道頓堀の松竹座には毎週のように通って外国映画を観ていました。なぜ外国映画かといえば、見知らぬ国の人情、風俗、風景などを知ることができるからです。入場料は大人50銭、小人学生25銭で、私は小柄なのと詰衿の服を着ていたので、多少気はひけましたが学生並みの25銭で入場していました。

ある日いつものように映画を観ているうち、小さな反省めいた気持ちに襲われました。毎週毎週これでよいのだろうかと、何か虚しいものを感じました。社長からいただいている貴重なお金をこのように使っていてよいのだろうかと心配になってきました。それに学生と偽って入場している後ろめたさ。私は堪えられなくなり外へ出ました。その足で会社へ帰り休日で誰もいない倉庫に入り、商品の整理をはじめました。そのうちに気持ちも少し落ち着き安心というか安らぎを感じました。

そしてこの日から映画より仕事の方が面白くなってきました。仕事を楽しむようになって、何時とはなしに商売上のことで、みんなから質問を受けても確実に答えられるようになり、大きな喜びと自信を持つようになりました。

「勝どん、この頃は映画に行かないようだね」と言われても、にやにや笑ってやり過ごしていた私でした。