カバン屋は結構な商売
三越さんとのお取引で思い出しますのは、私と郷里を同じくする石川県ご出身の役員Hさんのことです。昭和28年7月のある日、東京三越さんから大阪の私に電話が入り、即刻訪問したところHさんのご尽力で、お取引きが実現しました。店長さんと仕入部主任さんをご紹介くださいましたが、主任さんは大阪三越にてお取引のあった方で、ここでまた再開できた不思議なご縁を有り難く感じておりました。
当初、三越さんとのお取引額は月額で50,000円ほどでした。ある日、店長さんが立ち話の中で取引額を尋ねられましたが、後ろめたさから額面を言えず「頑張ります」と。そして「100万円に届かぬうちは、ご挨拶に伺っても迷惑をお掛けします。その節はどうぞ宜しく」とお伝えしていました。
その後、100万円達成の御礼へ伺い、次は200万円達成の時にと言っている間に500万円を突破。ご挨拶に伺うと店長さんは「カバン屋は結構な商売だな。私もやってみるか」と言われ、「それは大変です。私が失業してしまいます」と二人で笑ったことを思い出します。