固まる覚悟
ナイロンを紹介くださっている日精商事さんに、なかなか返事が出来ずにいた時の事です。1953年(昭和28年)2月26日、東京店の開設準備の最中、中尾商店さんがお祝いを兼ねて来店くださいました。中尾さんはお仕事で米デュポン社製ナイロンを取り扱われることから、ナイロンについて詳しく教えてくださるようお願いしていたのです。氏からの説明を聞くうちに、ナイロンはカバンの用途やデザインなど今までの常識を完全に打ち破る大きな魅力をもつ、実に画期的な新素材であることを確信しました。
そして「柳作よ、このナイロンは東レさんが大英断のうえ生産を開始された、素晴らしい製品だ。加えて日精商事さんがそれを紹介して下さっている。このチャンスがまだ分からぬか!」と、怒鳴られたような強い衝撃をうけたこの瞬間に、私が進むべき「道」が開かれたように思いました。